(4)考察

 

1)企業退職高齢者とパソコン通信−ダイヤネットワーク活動から−

 

@調査研究活動の結果得られた情報・知識−ダイヤネットワークの存在意義・特徴など−

 

  ダイヤネットワーク会員は、74人のうち72人までが当財団の賛助会員である三菱グループ29社の現役或いは退職高齢者である。会員から「参加者同士、誰でも、入会したその日からでも親近感のもてる仲間」としてお付き合いができるのはやはり同一グループのOBだから、という声をよく聞いた。また、当財団が会員の協力を得て、「企業退職高齢者の生きがいづくり」といったテーマのもと展開してきた研究活動は、企業退職高齢者として当事者でもある会員自身が、自分たち自身の問題として、自身で考え行動し、成果を電子会議室に開示することを通して、更には、自主活動の場に参加し、会員同士喜びを共有する機会にもなった。

  一社のOB会などでは、退職した後でも現役時代の上下関係がそのまま持ち込まれ、結果として、役職にあった人は役職組OB会、一般社員とは別々などといった運営がされていると聞くが、ダイヤネットワークは数社のOBが混在する環境下にあり、現役時代の職位職階が持ち込まれる弊害はなかった。むしろ、人生の先輩・後輩、或いは、能力に応じた役割分担の中で運営されたことは特筆に値する。

  更に、フォーラム運営では、運営に当たる事務局と参加者は、提供するものと利用するものという具合に立場が違うと一般に言われている。ダイヤネットワークでは、モデル事業の時、既に環境が出来たのであるが、現役職員が企業退職高齢者の生きがいづくりを後押しはしても、会員自ら行動を起こし、方向を見いだしていった。モデル事業から当研究へ移行した概ね一年間は、生きがいづくり活動が具体的に見えてこない期間で、趣味だ・遊びだという声も聞こえてきた時期でもあったが、運営委員会を組織し数ヶ月の検討の後、活動方向が見えてきた段階から(この間のことは活動記録集・電子会議室「掲示板」参照)企業退職高齢者のための生きがいを、企業退職高齢者自身、自らの手で引き寄せた活動であった。

 

Aシニア・ハッピーライフ研究会活動・その他の活動を通して得られた知見−高齢者にとって提供して欲しい情報のあり方など

 

  当財団では、「健康」「経済」「生きがい」を3本柱とした研究に取り組んでいる。その中で、当研究はパソコン通信をツールとした「生きがい」づくりという切り口からスタートした。

  スタート当初は、パソコン技術習得に多くの関心がよせられた結果、パソコン通信そのものが目的であるがごとき印象を与えた時期もあった。その時期は、丁度Windowsが3.1から95へと激変したのに伴い、通信ソフトなどでも大きな変化をした時期である。しかし、こういった技術的変革の嵐が収まるにつれ、ダイヤネットワーク会員にとって、パソコン通信手段が電話やファクシミリに優るとも劣らない「普段着の通信手段」として定着してきた。

  普段着の通信手段としてパソコン通信を日常生活に受け入れる段階では、《パソコン通信をツールとした「生きがい」》という「生きがい」に限定した考えが、もはや通用しない時期にきたことを意味する。

  ダイヤネットワーク及びその周辺で飛び交った情報は「健康」「経済」「生きがい」の全てにわたるものであった。ここで考えないといけないのは、情報の質や性格(分類)である。例えば、公的介護保険や金融関連情報、健康問 題などは企業退職高齢者にとって共通の関心事であろう。一方「三菱歴史探訪」「商品勉強会など会社情報」などはグループの人たちが特に関心を寄せる話題と思われる。また、旅行や登山、囲碁など小グループ活動の場を持つことも重要である。更に、情報は与えられる情報のみならず、参加者自身が発信する情報の場も必要だ。

  高齢者にとって提供して欲しい、或いは自ら発信したい情報は多岐にわたっている。それらの情報提供或いは交換の場を如何に組み立てるか、その仕組みづくりが重要課題である。共通話題と企業グループや小グループの話題の棲み分けとその運営、相互の連携といった構図が見えてくる。

 

Bコミュニティとしての意義

  パソコン通信は、文字に限らず、絵(写真)、音声(パソコン電話)、動画など送受信し、その場で見るにとどまらず、印刷物として取り出せるなど、電話やファクシミリでは出来なかった可能性をもたらした。

  ダイヤネットワーク会員の中には、遠隔地に赴任している息子・娘家族と両親(老親)の家族全員がパソコン通信に参加し、交流を深めている家族がいる。また、会員同士疑似家族?と見まごう位にコミュニティが形成された 例もある。

  シニアネッラーニングセンターの中でも、最大規模のジョージア州サバナ市のシニアネットを主宰するギャレット博士は、シニアネット会員の健康状態について疫学的調査をした結果、パソコン通信に参加している高齢者はそうでない高齢者より健康的であると指摘している。ダイヤネットワークとしても関心ある話題であり、これは特に調査はしていないが、確かにDOCOKAIに参加している会員は闊達として、新進的なことに興味をしめし、心身ともに若いといえる。

  ここまでくると、改めてコミュニティ形成手段としての意義を論ずる必要もないくらいであるが、ここまでくる道のりの中で何が必要だったかを振り返り、今後の課題を見いだすことに意義がある。

  ここでは、支援体制・機器/ソフト開発の方向に限定して問題を取り上げる。

  初心者向けパソコン教育は、高齢者にも目が向けられつつあり、パソコン入門時の支援体制は確保されそうである。しかし、厄介なのは、パソコンを日常的に使用している中で、突然トラブルに見舞われることである。

  ハードやソフトの故障なら、それはそれでメーカーやショップがバックアップしてくれるだろうが、例えば、パスワード入力時に大文字、小文字を違えると通信不能に陥るのである。パスワード入力では****の表示で、文 字確認出来ない仕組みになっている。電話問合わせに対応していると、当の本人(初心者)は大文字で入力したつもりでいる。しかし、実際は小文字入力になっているという具合である。

  今のパソコンの多くは、どのパソコンでも、どのソフトでも共通であるはずの機能が、例えば、日本語入力と半角英数字の切替などの操作がパソコンやソフトによって違うのである。表示もまちまちである。

  高齢者にやさしいパソコンの開発という話題は、往々にして、単機能パソコンの開発などに結論がいきそうであるが、購入者はいろいろ見比べたあげく、高機能パソコンを買い求めるそうである。高齢者も同じである。

  最近の機種はUSB接続が主流になり、周辺機器と接続時の悩みから解放されたのは大きな救いである。全てのパソコンやソフトに共通する操作部分は、どれをもってきても同じやり方といった基準作りをお願いしたい。

  現状では、初級者教育後の継続的な支援体制確保が是非とも必要である。初心者はどのような誤操作をするのか、高齢者はどうか、など対処した経験がトラブル解決のヒントを与えてくれるケースが多々ある。

  こういった支援体制づくりは、ボランティアに期待が寄せられがちだが、新たなニーズであり、有料の仕事として育成していく意識が利用する側にも、提供する側にも必要ではなかろうか。